「パリ」と一致するもの

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 第19回大阪アジアン映画祭は、3月1日から10日間の上映を終えて閉幕し、最終日の10日に授賞式が行われた。見事グランプリに輝いたのは、モンゴル映画の『シティ・オブ・ウインド』。台湾映画『サリー』(リエン・ジエンホン監督)が来るべき才能賞とABC賞の2冠を獲得、尼崎を舞台にした日本映画『あまろっく』(中村和宏監督)が観客賞を獲得した。全ての授賞結果と授賞理由をご紹介したい。
 
★グランプリ(最優秀作品賞)
『シティ・オブ・ウインド』(City of Wind)|フランス・モンゴル・ドイツ・ポルトガル・オランダ・カタール|監督: ラグワドォラム・プレブオチル(Lkhagvadulam Purev-Ochir)
 
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<授賞理由>
青春映画というジャンルの枠組みでグランプリを受賞した本作は、私たちが見たことのない世界を照らし出し、スピリチュアリティや世代間の対立といった問題を、巧みさと自信に満ちた手腕で描き出す。この映画は、主人公の成長を繊細に描きつつ、啓示的な演技を中心に据えている。
 
★来るべき才能賞
リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)|台湾|『サリー』(Salli/莎莉)監督
<授賞理由>
リエン・ジエンホン監督は、予想だにしなかった展開とひねりを加えつつも、過去の偉大なキャラクター主導型コメディを彷彿とさせる素晴らしい創作力を発揮した。思い出の場所や人物を散りばめた卓越した脚本で、心からの感動と大爆笑コメディを両立させるテクニックを披露したリエン監督の次回作を大いに期待する。
 
★ABC テレビ賞
『サリー』(Salli/莎莉)| 台湾・フランス | 監督: リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)
<授賞理由>
とてもほっこりした気持ちにさせる映画です。パリへと渡る主人公の葛藤もうまく描けていますし、家族や友人との触れ合いも暖かく、読後感が大変良いです。なにより、ニワトリが可愛い!
 
★薬師真珠賞
チー・ユン (CHI Yun/池韵)|オーストラリア・中国|『未来の魂』(Unborn Soul/渡)主演俳優
<授賞理由>
チー・ユン(池韵)という俳優が存在したからこそ『未来の魂』は生み出された。そして彼女の繊細で深みのある演技が、観客の魂を最初から最後まで揺さぶりつづけた。
 
★JAPAN CUTS Award
『カオルの葬式』(Performing KAORU’s Funeral)| 日本・スペイン・シンガポール | 監督: 湯浅典子(YUASA Noriko)
<授賞理由>
『カオルの葬式』はある家族の葬儀の場で起きる赤裸々な感情のぶつかりを見事に捉えたホームドラマである。タガの外れた演技の完璧な掛け合いが、パーカッションのリズムが心地よいサウンドトラックと勢いのいい編集と相まって、家族の機能不全を面白くも切なく描いたダークコメディに仕上がっている。
 
★JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『ブルーイマジン』(Blue Imagine) | 日本・フィリピン・シンガポール | 監督: 松林麗
(MATSUBAYASHI Urara)
<授賞理由>
松林麗の力強くて誠実な初監督作である『ブルーイマジン』は私たちが生きる現在の証であり、そのメッセージにおいて緊急性を、そのアプローチにおいて癒しを感じさせる。現代文化に蔓延るセクハラや虐待に大胆に立ち向かう一方で、団結のレジリエンス(回復力)を指し示している。
 
★芳泉短編賞
『シャングリラに逗留』(Sojourn to Shangri-la/是日訪古) | 中国 | 監督: リン・イーハン (LIN Yihan/林詣涵)
<授賞理由>
強烈なイメージの魅力で観客の心を掴んで離さない物語は、一連のマジカルな展開に続く導火線に火をつけ、特に驚くほどパワフルな後半で映画的衝撃をもたらす。『シャングリラに逗留』は見る者すべてに驚きを与え、それは監督の映画づくりの成功と言える。
 
★芳泉短編賞スペシャル・メンション
『オン・ア・ボート』(On a Boat)| 日本 |監督: ヘソ (Heso)
<授賞理由>
結婚と人間関係をテーマに真摯に向き合った本作で、ヘソ監督は力強い演出力と緻密に計算されたテクニックで完成度の高い作品に仕上げ、確固たる才能を印象付けた。
 
『スウィート・ライム』(Sweet Lime)| 香港・イギリス |監督: ファティマ・アブドゥルカリム (Fatema
ABDOOLCARIM)
<授賞理由>
子供であること、大人であること、そして女性であることについての重要な物語を、映画制作の高い能力をもって表現した。アブドゥリカリム監督自身のコミュニティに対する貴重な洞察であり、家父長制文化に抑圧される女性たちへのリアリズムに基づいた観察でもある。
 
★観客賞
『あまろっく』(Amalock)|日本|監督:中村和宏(NAKAMURA Kazuhiro)
 
登壇者(敬称略。右から)
デイヴ・ボイル(コンペティション部門審査委員)Dave BOYLE
村田敦子(コンペティション部門審査委員)MURATA Atsuko
アンガ・ドウィマス・サソンコ(コンペティション部門審査委員)
湯浅典子(『カオルの葬式』監督)
ヘソ(『オン・ア・ボート』監督)
リエン・ジエンホン(『サリー』監督)
ステファニー・アリアン(『ブルーイマジン』出演)
チー・ユン(『未来の魂』主演俳優)
ファティマ・アブドゥルカリム(『スウィート・ライム』監督)
中村和宏(『あまろっく 』監督)
板井昭浩(朝日放送テレビ株式会社コンテンツプロデュース局制作部)
薬師悠一郎(株式会社薬師真珠)
靜敬太郎(公益財団法人芳泉文化財団理事長)
上倉庸敬(大阪映像文化振興事業実行委員会委員長)
 
第19回大阪アジアン映画祭公式サイト https://oaff.jp 
 

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◆日時:2月2日(金) 18:30〜19:00

場所:T・ジョイ梅田(大阪府大阪市北区梅田1丁目12−6 E-MA ビル 7F)

登壇者:文音、松村沙友理、光岡麦監督  MC:遠藤淳
 


 

台本なしの全編アドリブのミステリー映画!?

“呪いの血”が招く殺人事件の予測不能な推理劇

 

「マーダーミステリー」という参加者が推理小説の登場人物となり話し合いながら事件の解決を目指す体験型ゲームの新ジャンルが中国で始まり、日本でもリアル、ネットを問わず多くのイベントが開催され、「リアル脱出ゲーム」や「人狼ゲーム」に続く次世代の体験型ゲームと言われている。朝日放送テレビにて 2021 年 3 月、ストーリーテラーに劇団ひとりを迎え「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」としてドラマ化され、その劇場版が2月16日より全国にて公開される。


madamisu-pos.jpg今までにない俳優による緊張感のある即興劇(アドリブ)と先の読めない展開が話題となり、今回豪華俳優陣による誰も知らない結末が待つミステリー映画が完成。探偵・斑目瑞男を演じる劇団ひとりや斑目の助手役の剛力彩芽をはじめ、全員が容疑者となる木村了、犬飼貴丈、文音、北原里英、松村沙友理に、八嶋智人、高橋克典などのベテラン勢も出演。


この度、富豪の後妻となりお邸の女主人を演じた文音と、そのメイド役の松村沙友理、そしてマーダーミステリー映像化の第一人者である光岡麦監督が先行上映会にて舞台挨拶に登壇し、映画の見所や撮影秘話について語ってくれた。松村沙友理と光岡麦監督は大阪出身ということもあり、関西弁でざっくばらんにトーク。パワフルで本音でトークする大阪の人が好きだという文音も、ほぼアドリブで展開していく現場に戸惑いながらもミステリー劇の面白さについて語ってくれた。
 


〈詳細は以下の通り〉

――いよいよ2月16日から公開されますが、今のお気持ちは?

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文音:ミステリー映画ではありますが、コメディー要素も多分にありますので、我慢せずに声に出して笑って楽しんで頂きたいと思います。

松村:撮影中はどんな作品になるのか全く想像つかなかったのですが、映画として斬新で凄く面白いなと感激しました。皆さんにも楽しんで頂ければと思います。

――新しい感覚の映画ということですが、監督は?

松村:(いきなり)天才監督!…言うときましたよ(笑)

光岡監督:すべてアドリブの映画ってあんまりないですし、皆さんも演じたことないと思いますので、新しい感覚の映画だと思います。


――そのお笑いに厳しい大阪ですが、皆さんにとっての大阪の印象は?

松村:私は大阪出身ですが、来る度に街が綺麗になっていってる感じがして、パリみたい!?

――パリ?どの辺が?

松村:大阪駅の辺りとか、ロンドンみたいだと思いません?ええ?褒め過ぎ?大阪のこと好き過ぎてそう見えてんのかな…(笑)

文音:ニューヨークに2年間演劇留学していたんですが、その時日本人の方とも仲良くなっていって、大阪の方は精神力と根性が凄いので、東京出身の友達がどんどん日本に帰っていく中、大阪の友達はずっとニューヨークにいたんですよ。大阪の人はパワフルなイメージが強いです。大阪の人は気持ちを包み隠さず言ってくるし、嘘がなく気持ちいいので大阪の友達が多いです。そういう人好きです!

――でも、最後は「知らんけど」が付きますけどね(笑)

文音:はい、そんなイメージです。

――パリ・ニューヨークと来て、監督は?

光岡監督:僕はずっと大阪なんで、今も大阪に住んでます。この映画館も学生の頃からよく来てました、ADの頃にも…。


madamisu-bu-di-240-1.jpg――光岡監督は本業はTV制作に携わっておられるんですよね?今回映画監督になられた感想は?

光岡監督:映画監督なんて僕らTVの人間にとっては憧れですからね、雲の上のような存在なんで、いまフワフワしてます。まだ映画監督なんて言い切れるもんじゃないんで…(笑)


――新感覚の全編アドリブ演技ということですが、現場の雰囲気は?

文音:まず一人一台の車が付き、アドバイザーが各自一人付いてるんです。まるで監視役みたいで、俳優同士が会話をしないようにと隔離状態でしたので、緊張感が凄かったよね。

光岡監督:人物設定書はあらかじめお渡ししていたのですが、「あの時こうだったよね」などと皆さんで話し合わないで下さいね、と横の会話もないようにバラバラで居てもらいました。嫌な空気だったと思います。

文音:普通、最初にご挨拶するのですが、それもなくいきなり「ヨウイ、スタート!」と撮影に入りましたので、それはもう緊張感のある現場でした。


――クランクアップまでずっと我慢されてたんですか?

松村:ず~っと人を疑ってました(笑)スタッフさんさえ疑ってました。アドリブで進められるので、その内スタッフが「実は僕が…」なんて言い出しかねない雰囲気でしたね。終いには自分のマネージャーも疑ってしまいました(笑)

――そういうキャストの表情は監督にはどう映っていたのですか?

光岡監督:皆さん人間不信になっておられたようでした。私に何か聞きたそうだな~という時でも、無視してました。どんどん嫌われていってるようでしたね。


madamisu-bu-matsumura-240-2.jpg――スタートからゴールまで先の読めない展開ですが、最も苦労した点は?

文音:全部が苦労でした!やはり終盤になって犯人が判明しつつある頃に頭の中がぐちゃぐちゃっになっていったので、その頃が精神的なピークを迎えてましたね。

松村:いろんなヒントやアイテムが提示されるのですが、それらを覚えるのに必死でした。それから次から次へといろんな事が起きるので、状況を覚えるのも大変でした。

――監督は要所要所でエッセンスを落としていくという作業だったのですか?

光岡監督:台本はないけど、事件のあらましはあったので、証拠的アイテムをその都度提示していき、後は俳優さんたちにお任せでした。その証拠をどう扱って、どう盛り上がって、誰が怪しまれていくのか、僕らも全然想定できなくて、多分皆さん探り探りしながら始まったと思いますが…。

文音:最初の私の声なんて、めちゃめちゃ小さくて!自信なくて…(笑)

光岡監督:難しやろな~やりにくいやろな~と思いながら撮っていったんですが、エンディングまでお任せなんで、どうなるんやろ?ほぼムチャぶりで、「皆さんでオチつけて下さい」と投げてましたが、次第にチームワークが築かれていったようでしたよ。

文音:最後は芝居を創り上げた一体感は凄く出ていたと思います。

光岡監督:皆さんのお陰です!それに尽きます。


――完成版を観た感想は?

文音:キャラクターのバックグラウンドが完成されて初めて分かったことが沢山あるので、2回観て理解することもありました。現場には10カメ(10台のカメラ)あったんですよ。そんな現場なんてないですから、編集も大変だったのでは?

松村:凄いです。天才!(笑)

光岡監督:(確信犯のように)言わせてますね(笑)

松村:演じてる時は、「これほんまに作品になるんかな?」と思っていたら、ちゃんと面白い作品に仕上げて下さって、やっぱ凄い!って思いました。


madamisu-bu-500-3.jpg――文音さんと松村さんは、使われなかったシーンとかありましたか?

文音:それすら忘れてる~(笑)完成作を観て、少しずつ思い出したくらいですからね。

松村:カットされてるというより、思ったより喋ってない自分の顔が使われていて、それが興味深かったです。皆さんの細かい表情も使われていてびっくりしましたね。


――劇団ひとりさんとの共演は大変だったのでは?

光岡監督:ネタバレになるのであまり言えませんが、松村さんが劇団ひとりさんに追い詰められてましたね…。

松村:あまり覚えてないのですが、リベートのように言い合ったのは面白かったような…負けたくない!という気持ちで…、

文音:さすが関西人!(笑)

松村:負けたくない!勝ちたい!と根性でバトルしてました(笑)

文音:劇団ひとりさんがめちゃくちゃ暴れるので、笑うのを堪えるのに必死でした。役を超えて自分自身が出てしまうところもあるので、それも見所の一つではないかと思います。

光岡監督:笑ってる部分もカットできなかったので、そのまま写ってます(笑)


madamisu-500-1.jpg――文音さんと松村さんのお互いの印象は?

文音:撮影中はあまり喋れなかったので…でも今日一日ずっと一緒にいて、メチャ可愛らしくて、朝からの取材で段々と疲れていくのがわかって、ありのままが可愛い女優さんだなぁと。ファーストカットから緊張してたのか、目がうるうるしていて、「なんて純粋な娘(こ)なんだろう」と思いました。

松村:文音さんは現場にいらっしゃった時からオーラというか存在感が凄くて、お屋敷の女主人としての立ち居振る舞いが素晴らし過ぎて!それにあのドレス似合う人、他にいませんよ!

文音:あれは監督と決めたんです。いくつかパターンがあったのですが、一番派手なドレスを選んだんです。

光岡監督:はい、満場一致で(笑)

松村:私はメイド役だったので文音さんの後に立つことが多かったのですが、めっちゃ文音さんの背中を見てました。「きれ~いっ!」(笑)


madamisu-bu-500-1.jpg――最後のご挨拶。

文音:この映画は台本がなく、私たちもそんな映画はやったことがないのですが、役柄なのか俳優の素なのかその狭間に新しい何かを見つけてお楽しみ頂ければ嬉しいです。

松村:撮影中はどんな映画になるのか分かりませんでした。皆さんもどこまでがアドリブなのかと不思議に思われるかも知れませんが、殆どアドリブですので驚いて頂けたら嬉しいです。1回だけでなく、2回3回観て頂ければより楽しめると思います。よろしくお願いいたします。

光岡監督:役者さんたちの力の凄さを感じたくてこの作品を企画したのですが、台本がないからこそ、役者さんたちの素のスピードやチカラや迫力を感じながら観て楽しんで頂けたらと思います。本日はどうもありがとうございました。
 


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殺された少女の怨念か、「三つ首祭り」の夜に起きた連続殺人事件。

【ストーリー】
舞台は『一夜のうちに3人の生贄の血を滴らせると死者が蘇生する』という不気味な伝承が残る鬼灯村(ほおずきむら)。その伝承をもとに「三つ首祭り」という不気味な鬼祭が行われた夜、村の長を務める一乗寺家当主が何者かに殺される。

その夜一条寺家に集まった7人に加え、祭りの最中村をうろついていた不審人物(劇団ひとり)が乱入し、犯人捜しが始まる。豪雨のため警察は来ない中、さらに殺人が……。次第にそれぞれの秘密が暴露され、殺害の動機を持つ容疑者は増えるばかり…誰が何のために殺したのか?

 

・監督:光岡麦 ・シナリオ構成:渡邊仁 ・企画:安井一成
・出演:劇団ひとり、剛力彩芽、木村了、犬飼貴丈、文音、北原里英 松村沙友理 堀田眞三/八嶋智人 高橋克典
・2024年製作/103分/G/日本
・宣伝・配給:アイエスフィールド ・配給協力:ショウゲート
・© 2024 劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

【公式 HP】 https://madarame-misuo.com/

【公式 X】 https://twitter.com/MadarameMisuo (アカウント: @MadarameMisuo)
 

2024年2月16日(金)~T・ジョイ梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、T・ジョイ京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国ロードショー


(河田 真喜子)

 
 

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 歴史映画にフォーカスした第15回京都ヒストリカ国際映画祭が、2024年1月23日(火)~1月28日(日)に京都文化博物館 3Fフィルムシアター、6F和室、1Fろうじ店舗にて開催される。映画ファンだけでなく、映画の作り手やアニメ、VRなどのクリエイターが集い、交流し、新たなクリエイティブへの力にしてもらうことを主眼においている映画祭として国内外から注目を集めており、今年は新たにポーランドのNNW国際映画祭とも連携企画がスタートする。
 
 京都ヒストリカ国際映画祭、今回のテーマは「LOOK」。映画の質感を表現し、ひと目で違いが歴然のLOOKを持つ歴史映画を新旧織り交ぜて紹介する。毎年オープニング上映として高い注目を集めるヒストリカスペシャル。今回は、大ヒットアニメ『ONE PIECE』の中でも、シーズン上映が終了したばかりのTVアニメ『ONE PIECE』ワノ国編をフューチャー。時代劇映画の記憶をふんだんに潜ませた江戸時代を舞台にし、そこでの冒険を描いたクリエイターたちが集合し、ワノ国編の舞台裏を語る。
 
 
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 毎年映画ファンが注目のヒストリカ・ワールドでは、今回も日本初上映の4本がラインナップ。『マーティン・エデン』(19)のピエトロ・マルチェッロ監督最新作、イタリア映画『スカーレット』(画像上)は100年前のサイレント映画を着色して使用するなど、とてもユニークなLOOKにも注目したい作品。マルチェッロ監督もゲストで登壇予定だ。また、第二次世界大戦下が舞台のポーランド映画『Filip』は、初となるNNW国際映画祭連携作品。同映画祭のプログラムディレクター、スワヴォミール・チォク氏も来場する。
 さらに、ルネサンス時代のLOOKを変えた画家の人生を描く『カラヴァッジョの影』では、日本のカラヴァッジョ研究第一人者の宮下規久朗氏によるトークも。アルノー・デ・パリエール監督のフランス映画『パーティー・オブ・フールズ』も上映される。
 
 

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ヒストリカ・フォーカスでは、「LOOKが違う、世界が違う、刺激のレベルが違う挑戦者たち!」と題し、黒澤明監督の『用心棒』をはじめ、全8本がラインナップ。現在絶賛公開中の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』と見比べたい、ティム・バートン監督×ジョニー・デップの黄金コンビによる大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』も久々スクリーンで鑑賞できる。全て上映後にトーク開催予定だ。
●上映作品
・『用心棒』 監督:黒澤明 日本|1961|110分
・『ツィゴイネルワイゼン』 監督:鈴木清順 日本|1980|144分
・『デッドマン』 監督:ジム・ジャームッシュ アメリカ|1995|121分
・『チャーリーとチョコレート工場』 監督:ティム・バートン アメリカ|2005|115分
・『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 監督:デビッド・フィンチャー アメリカ|2008|167分
・『シャーロック・ホームズ』 監督:ガイ・リッチー アメリカ|2009|128 分
・『十三人の刺客』 監督:三池崇史 日本|2010|141分
・『ノースマン 導かれし復讐者』 監督:ロバート・エガース アメリカ|2021|137分
 
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イタリア文化会館‒大阪企画プログラムではボローニャ復元映画祭連携企画として、ルキーノ・ヴィスコンティが没落貴族を描いた豪華絢爛な代表作『山猫』4K復元版を上映。
さらに、ヴェネツィア・ビエンナーレ ビエンナーレ・カレッジ・シネマ連携企画では、俳優として出演もしているモニカ・ドゥーゴ監督の『カメのように』(画像下)、キアラ・トロイージ監督のVR短編作品『MONO』を上映。両監督も来場予定だ。
 
 
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 他にも
●松竹下加茂撮影所100年記念上映 上映作品『狂った一頁』 監督:衣笠貞之助
●京都フィルムメーカーズラボ連携企画 「カムバックサーモン・プロジェクト」 上映作品『桜色の風が咲く』 監督:松本准平
●第14回京都映画企画市 優秀映画企画作品 上映作品『うつつの光、うつる夜』(パイロット版映像) 監督:鹿野洋平 
を上映。
 
 最後に、京都文化博物館6F和室を使ってトークの場を設けた「ヒストリカ お座敷」(参加無料)は、今回の新たな目玉企画。映画『つるばみ色のなぎ子たち』を制作中の片渕須直監督をお招きしてのトークや関連展示も行われる。
 
【開催概要】
第15回京都ヒストリカ国際映画祭(KYOTO CMEX 2023公式イベント)
期間:2024年1月23日(火)~1月28日(日)
会場:京都文化博物館 3F フィルムシアター、6F 和室、1F ろうじ店舗
 
前売券販売:2024年1月13日(土) チケットぴあにて販売開始
※「ヒストリカ・スペシャル」は入場無料、事前申込制
 
映画祭公式 WEB サイト: https://historica-kyoto.com/
 
 

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妻への疑念から、隠しカメラを設置し…

モノクロームの世界観が観る者を異世界へと誘う、

新感覚の日本映画『ホゾを咬む』


「後悔する」という意味のことわざ「臍ホゾを噛む」からタイトルをとった映画『ホゾを咬む』は、本作ヒロインの小沢まゆが主演する短編映画『サッドカラー』が PFF アワード 2023 に入選するなど、国内映画祭で多数入選・受賞している新進気鋭の映像作家・髙橋栄一脚本・監督の最新⻑編映画

髙橋監督自身が ASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンと診断されたことに着想を得て、独自の切り口で「愛すること」を描いた本作。モノクロームの世界観が怪しさと品格を放ち、独特な間合いや台詞が観る者を異世界へと誘う、新感覚の日本映画が誕生した!


主人公・茂木ハジメを演じるのは、主演するコメディアクション『MAD CATS』(2022/津野励木監督) から、『クレマチスの窓辺』(2022/永岡俊幸監督)、『とおいらいめい』(2022/大橋隆行監督)など、幅広い役柄をこなすカメレオン俳優・ミネオショウ。映画『少女〜an adolescent』(2001/奥田瑛二監督) で国際映画祭で最優秀主演女優賞受賞の経歴を持つ俳優・小沢まゆがプロデューサーとヒロイン役を務め、木村知貴、河屋秀俊ら実力派の面々が脇を固めているほか、『百円の恋』(2014)など武正晴監督作品に数多く参加し、『劇場版アンダードッグ』(2020)で第 75 回毎日映画コンクール撮影賞を受賞した西村博光が撮影監督を担当した。
 


本作は、
12 月 2 日(土)〜12 月 8 日(金)に新宿 K’s cinema にて連日 14:10〜、
12 月 15 日(金)〜12 月 21 日(木)に池袋 HUMAX シネマズにてレイトショー、
12 月 16 日(土)〜12 月 22日(金)に大阪シネ・ヌーヴォ、
12 月 23 日(土)〜12 月 29 日(金)にシネ・ヌーヴォ X にて連日 11:00〜、
1 月 20 日(土)〜1 月 26 日(金)に横浜 シネマ・ジャック&ベティ、
来年に名古屋・シネマスコーレ、神戸・元町映画館ほか全国順次公開される。

 


【大阪・シネ・ヌーヴォ 舞台挨拶の登壇者】

◯12/16(土):髙橋栄一監督
◯12/17(日):小沢まゆ(出演・プロデューサー)
◯12/23(土):小沢まゆ(出演・プロデューサー)


◆<小沢まゆ プロフィール>

映画『少女〜an adolescent』(奥田瑛二監督/2001)に主演し俳優デビュー。同作で第 42 回テサロニキ国際映画祭、第 17 回 パリ映画祭、第 7 回モスクワ国際映画祭 Faces of Love にて最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作品に『古奈子は男選びが 悪い』(前田弘二監督/2006/主演)、『いっちょんすかん』(行定勲監督/2018)、『DEATH DAYS』(長久允監督/2022)、『こいびとのみつけかた』(前田弘二監督/2023)などがある。2022 年に初プロデュース映画『夜のスカート』(小谷忠典監督)が劇場公開。出身地熊本県の震災復興映画イベントを主催するなど多方面で活動している。
 


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◆俳優として活動してきて、2022 年の『夜のスカート』で初めてプロデュースをされたそうですが、プロデュース業も始めた経緯を教えてください。

今後の人生をどう生きていこうかを考える 40 歳になるタイミングが、ちょうどコロナ禍の時期に重なったんです。世界中がいっぺんにひっくり返ることがあるんだな、常識だと思っていたことが変わっちゃうんだなと、目の当たりにした時に、自分の人生も、好きなことをやらないと、いつ何時どうなってしまうかわからないなと思い、「映画を作ってみたい」という漠然とした憧れを、今実現させようと思いました。その時子供が二人とも中学生になっていたので、育児が落ち着いたタイミングだったのも大きかったです。


◆本作ではプロデューサーとしてはどのような仕事をしたんですか?

髙橋監督は、『サッドカラー』などでご一緒したのですが、独自の視点を持たれている監督さんだなと感じていました。プロデューサーはお金の目処を立てるのが最大の仕事なので、文化庁の AFF2 という補助金に申請しました。「これから業界を活発にしていくであろう人材を見つけて世に出していく活動をしたい」というのも応募書類の企画意図に書きました。

あとは、ロケ地は基本的に私が探して、髙橋監督に提案して、一緒に見に行って決めていく、というやり方でした。撮影中は制作部の仕事もしました。


hozokamu-500-2.png◆髙橋監督は、どのような監督ですか?

『ホゾを咬む』に関しては、独特のテンポを求められるなと思いました。会話する時のズレだとか会話が始まる前の空気感、会話が終わった後のなんとも言えない雰囲気、そこまで全部映画として見せたいというのが演出から伝わりました。独自の視点や感性を持った方だと思います。


◆本作の企画を聞いてどう思いましたか?

夫が妻を監視していく話なんですけれど、人には、「信じたいけれど疑ってしまう」だとか、「疑っている芯の部分には信じたいという想いがある」だとか、「信じる」と「疑う」という相反するものが、ワンセットで心にあるなと感じていたので、それを映画として表現したら面白いものになるなと思いました。


hozokamu-500-4.png◆ご自身だったら、普段とは全く違う格好のパートナーを街で見かけたらどうしますか?

ハジメと同じで、聞くに聞けないですね。聞いたことによって何かが崩れてしまうかもしれないと思うと、一旦、「もうちょっと時間を置いてみよう」だとか、違う探り方をしてしまうように思います。


◆ミツをどのような人物と捉えましたか?

ミツはすごく自由な人だと思って演じました。映画の中では明確に出していないのですが、絵本の翻訳家という設定です。ミツの仕事については、監督と相談して、家の中で作業をして完了する仕事にしました。この夫婦は結婚して 10 年以上経っていて、子どもが欲しかったけれどできなかった夫婦なんです。二人で住むには大きい三階建ての一軒家に住んでるのも、結婚当初、将来子どもができることを想定していたからなんです。子どもはできなかったけれど、ミツは日々の生活や自分の人生を楽しんでいる女性です。家にいるのが好きで、好きな仕事をして、好きな服を着て、好きな料理を作って暮らしている自由な人というのを意識しながら演じました。


◆ミツを演じる上で工夫した点はありますか?

この作品では、夫が街で妻らしき人を見かけて、そこから疑いの念を持って妻を監視していくんですけれど、ミツと、夫が見かけたミツらしき人が同一人物なのか、全く別の人物なのか、夫が幻で見た人なのか、映画としては答えを出していません。観客によって色んな受け取り方があると思うので、観る人それぞれが捉えられるような余白のある演技を心がけました。


hozokamu-500-1.png◆ハジメとのシーンの撮影はいかがでしたか?

監督は、夫婦間にあるズレや噛み合わなさを表現したいんだろうなと感じていたので、そこを意識して演じました。結婚して 10 年以上経っていて、わざわざ言葉にしないこともあるし、好きとか嫌いとかの次元じゃなくなっているところもあるけれど、ミツはハジメのことが根底では好き、という想いで演じました。


◆ハジメ役のミネオショウさんとはご一緒していかがでしたか?

ミネオさんの出演作は何作か拝見していて、勝手にクールな印象を持っていたんです。でも、お会いすると明るいし、よく喋るし、笑い声が大きいから、遠くにいてもミネオさんが笑っている声が聞こえてきて、そういうミネオさんの雰囲気のお蔭で現場が明るくなり、それにいつも助けられていました。


◆読者へのメッセージをお願いします。

自分が信じているものが果たして真実なのか、また、傍にいる人のことをちゃんと理解できているのか、それは誰にもわからないと思います。この映画を見ると、その大切なもの、信じているもの、もしくは疑っているものの見つめ方が、自分の中でちょっと変わるかと思います。劇場の閉ざされた暗がりでスクリーンを見つめながら、同時に自分自身も見つめていただけると、何か見えてくるものがあるかと思います。ぜひ劇場で御覧ください。
 


【あらすじ】

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不動産会社に勤める茂木ハジメは結婚して数年になる妻のミツと二人暮らしで子供はいない。ある日ハジメは仕事中に普段とは全く違う格好のミツを街で見かける。帰宅後聞いてみるとミツは一日外出していないと言う。ミツへの疑念や行動を掴めないことへの苛立ちから、ハジメは家に隠しカメラを設置する。自分の欲望に真っ直ぐな同僚、職場に現れた風変わりな双子の客など、周囲の人たちによってハジメの心は掻き乱されながらも、自身の監視行動を肯定していく。

ある日、ミツの真相を確かめるべく尾行しようとすると、見知らぬ少年が現れてハジメに付いて来る。そしてついにミツらしき女性が誰かと会う様子を目撃したハジメは...。


出演:ミネオショウ 小沢まゆ 木村知貴 河屋秀俊 福永煌 ミサ リサ 富士たくや 森田舜 三木美加子 荒岡龍星 河野通晃 I.P.U 菅井玲
脚本・監督・編集:髙橋栄一
プロデューサー:小沢まゆ
撮影監督:⻄村博光(JSC)
録音:寒川聖美
美術:中込初音
スタイリス:タカハシハルカ ヘアメイク:草替哉夢
助監督・制作:望月亮佑 撮影照明助手:三塚俊輔
音楽:I.P.U
エンディング曲:James Bernard – Growth (I.P.U Recycle)
製作・配給:second cocoon
配給協⼒:Cinemago
⽂化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
2023 年/日本/4:3/モノクロ/108 分/DCP/5.1ch
(c)2023 second cocoon

公式サイト: https://www.second-cocoon.com/work/hozookamu/

公式 X アカウント:https://twitter.com/hozookamu

公式 Facebook: https://www.facebook.com/hozookamu

12 月 2 日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開

◆髙橋栄一監督インタビューはこちら

◆ミネオショウ インタビューはこちら


(オフィシャル・レポートより)

 

 
 

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◆日程:11月15日(水)18:30~19:00

◆会場:大阪ステーションシティシネマ 【シアター1】
(大阪府大阪市北区梅田 3-1-3 ノースゲートビル 11F)

◆登壇ゲスト:上野樹里さん、林遣都さん



rinjinX-pos.jpgもし、人間と同じ姿形をした他の惑星から来た難民Xがいたらどうするだろう?触れることで人間そっくりにコピーしてしまい、人間社会に紛れて生活をする。人と争わず傷付けることなく静かに生きる人間以上に優しい存在だという。だが、コロナ禍のパンデミックのように、誰かが感染しているのでは?と不安と恐怖で疑心暗鬼になって人間同士で攻撃し合う事態になり兼ねない。誰がXなのか? Xの正体を突き止めようと犯人捜しのように誰彼なく疑って見てしまう。そんな世の中にあって、ある崖っぷち状況の週刊誌の記物がⅩのスクープを獲ろうとターゲットの女性を騙して近付いていく。だが、次第に大切な何かを見失っていく自分に気付いて、本来為すべき行動をとっていく。


人間とは何か? 偏見や思い込みで他者を判断していないだろうか?日々不安を掻き立てられるような事が次々と起こる世の中で、何を信じて、何に拠り所を求めて生きていけばいいのだろうか?そんな不安な気持ちや自分自身のものの観方を改めて考えさせてくれるミステリーロマンス、『隣人X-疑惑の彼女-』がいよいよ12月1日(金)から全国公開される。Xの嫌疑を掛けられた主人公の柏木良子を演じた上野樹里と、崖っぷち週刊誌記者を演じた笹憲太郎を演じた林遣都が、公開を前にして開催された先行上映会の舞台挨拶に登壇。


二人とも厳しくも丁寧な演出で定評のある熊沢尚人監督とは2度目のコラボとなり、30代を迎えた俳優としての意欲を監督にぶつけては手応えを感じ取っていたようだ。そして、初共演となるお互いの魅力についても語ってくれた。
 


(詳細は以下の通りです。)

――最初のご挨拶

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上野:今日は週の真っ只中のお忙しい中お集り頂き誠にありがとうございます。今日は楽しんでいって下さい。

林:今日はお忙しい処をご来場下さいましてありがとうございます。(お二人とも関西出身ということもあり…)関西弁出ないね?

上野:出ないんですよ~。

林:今日は取材などで記者さんたちと話している時には関西弁が出ていたのに…僕も関西出身なのに人前で関西弁で話すのは無理ですね~(笑)


――今日は朝から大阪のマスコミ取材を受けられていましたが?

林:関西弁が出るのは僕にとってオフモードなんでしょうね、仕事時には出ないもんですね。

上野:大阪の記者の皆さんはしっかり作品を観てから楽しい質問をして下さって、今日はとても充実した時間を過ごすことができました。


――上野さんは加古川出身で加古川市の観光大使もされてますけど、大阪の思い出とか印象とかはありますか?

上野:そうですね~大阪は、長年CMをさせて頂いている大和ハウスの本社があるとか、以前大阪NHKで朝ドラに出演させて頂いたこととか…ユニバーサル・スタジオへは行ったことがありますよ。叔母と一緒だったのですが、叔母が乗り物酔いしちゃって支えるので精いっぱいで、ゾンビが襲って来てもそれどころじゃなくて、もうゾンビも追っかけて来ませんでした(笑)


rinjinX-bu-hayashi-240-1.jpg――林さんは大津市出身ですが、今回の作品では大津市での撮影が多かったようですね

林:はい、ほぼオール大津ロケです。

――ご家族の方も撮影を見に来られていたのですか?

林:良子さんと二人で歩くシーンで港が見える所があるのですが、そこは僕が学生の頃の悩める時期によく行っては自分自身と向き合っていた場所でして、実家からも近いので、今回も家族に撮影を見に来てもらっていました。まさかそこで上野樹里さんと一緒に歩ける日が来るとは…とても感慨深く、その日の撮影は素敵な一日となりました。


rinjinX-500-2.jpg――お二人は初共演ということですが?

上野:はい、そうです。林さんは今回、無精髭を生やした記者の役なんですが、それがとても大人の色気が出ていたように感じました。独りでひっそりと暮らしていた36歳の良子が笹という記者にどんどん距離を縮められていくのですが、ドキッとするシーンもあったので、林遣都さんのファンの方は、そんな林君にドキドキしながら映画を楽しん頂けると思います。

それと、林さんはとても真面目な方で、最初のリハーサルの時から凄い熱量で臨んでおられたので、この映画は絶対面白くなると思いました。この映画で共演できて、とてもいいタッグが組めたと思っています。


林:本当に上野樹里さんと出会えて良かったなと思います。撮影後も取材などで何度かお会いする機会があったのですが、毎回思う事は人間力が凄い方だということです。考え方とか生き方とかがお芝居に滲み出ていて、今の時代に必要な何かをお持ちの人だなと思います。映画の中の良子さんもそういう人なんですが、その良子さんを樹里さんが演じられたから良かったと心から思っています。皆さんもこれから映画を観て頂ければ、僕が言いたいことを分かって頂けると思います。


――この良子さん役は是非上野樹里さんにと熊沢尚人監督がオファーされた訳ですが、熊沢監督とは『虹の女神』(‘06)以来ですね?

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上野:はい、二十歳の頃に岩井俊二さんプロデュースの映画で熊沢監督とご一緒させて頂きました。でもその時は岩井さんも編集に携わっておられたので、今回のような熊沢監督・脚本・編集のような密な作業に携わったのは初めてです。17年ぶりですので、どれだけ成長した姿を見せられるのか?台本頂いた時にすぐに読んで、すぐに電話をしました。監督の電話番号も知らなかったので調べまくって掛けました。それから1年半をかけて良子という女性を創り上げていったのです。


――林さんも熊沢監督とは『ダイブ』(‘08)以来だそうですが?

林:当時、まだこの仕事を始めたばかりでしたので、とても厳しい監督という印象が強かったです。年を重ねていくと厳しく指導して下さる監督とは中々出会えないもので、今回お話を頂いた時には15年ぶりですが、今の自分を確認するためにも是非ご一緒したいなと思いました。愛情のある厳しさは全く変わってなくて、一つの役をやるにも丁寧に向き合って下さるし、足りてない部分があると細かい部分まで詰めて来て下さいました。『ダイブ』の時には若者が集まる青春映画だったので、熊沢監督のことを陰で“鬼沢”と呼んでいたくらいです(笑)ああ、思い出しましたね、“鬼沢の千本ノック”!でも、そうして追い込んで頂いたからこそ発揮できる表情や演技もあるので、今回15年ぶりにご一緒させて頂いて、いいことばかりでした。


――上野さんはキャラクターに合わせて衣装とか小物にこだわられたとか?

上野:脚本が徐々に形になっていくと、良子さんのシルエットやイメージも膨らんでいき、街中を歩いていても良子さんを探している自分がいました。髪型を変えてみたりアクセサリーや服でも自分の私物を使ったりしていました。実は良子さんと同じカーディガンを他の作品でも着ていたんですよ(笑) 監督とも相談しながら選んでいましたが、そこで意見がズレることもなかったので、良子さんのビジュアルや声のトーンなど、徐々に創り上げていきました。


rinjinX-500-1.jpg――上野さんは撮影中の住居も借りられたとか?

上野:本当は良子みたいにアパートを借りて住みたかったのですが、それはさすがに危ないだろうということで、プロデューサーからお許しが出ませんでした。そこで、マンスリーの家を借りて色々持ち込んで、仕事の帰りにスーパーに寄って自炊してました。ホテルに缶詰になるのは息苦しいので、そこで暮らすように過ごせたらと思って…。


――林さんは週刊誌記者の役だと聞いた時の感想は?

林:記者は身近なお仕事でもあるので、一度覗いてみたいな面白そうだなと思ってやらせて頂きました。笹という役はこの映画の目線としても描かれているように、笹が何かに気付いて変わっていくことはこの映画の大事な部分でもあるので、その役割をしっかり果たさないといけないなと思っていました。


rinjinX-500-4.jpg――この映画の注目点は?

上野:観終わった後、どこが印象的だったかをSNSとかでも話し合ってほしいですね。心の中って自分自身でもよく分からないし、偏見や何かしらのフィルターを通して物事を見ていることを、笹という人物を通して体感してほしいです。一度観て頂いて全部わかった上でもう一度、今度は良子の目線で観るとか、男性と女性の立場で見直すとかして頂いたら、また違った楽しみ方ができるのではないかと思います。


――上野さんはインスタライブでもこの作品について答えておられますが?

上野:はい、92分!皆さんに沢山の質問を寄せて頂きましたので、それに答えていきました。


――林さんの注目して欲しい点は?

林:やはり良子さんですね。彼女を始めとする登場人物は我々が無くしてはいけない大切なものを持っている人たちなんです。それぞれが大変な思いを抱えながら生きているのですが、そういう人たちに感じるものがとても大切なことで、怖い世の中ですが、日常の中に目を向けてみるとこんなにも素敵なことが散らばっていることに気付かされると思います。


rinjinX-500-3.jpg――最後のご挨拶

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林:これから名古屋へ行きます!(笑) 今回は大阪を満喫する時間がありませんが、またゆっくりと来たいと思います。最近僕もユニバーサル・スタジオへ行きまして、「ザ・フライング・ダイナソー」に乗りまして…あれは凄かった~!(笑) コロナ禍からしばらく経っても世の中まだまだ不安なことがいっぱいあります。この映画が身近にある素敵なことに目を向けるキッカケになればいいなと思います。それぞれの感想をSNSなどで発信して頂ければ嬉しいです。僕、探しますので! 今日はどうもありがとうございました。


上野:今日は公開前なのに観に来て下さいまして本当にありがとうございます!世の中目まぐるしくどんどん変わっていっています。勿論いい部分もありますが、惑わされたり自分の大切なものを見失ったりして、大切な人の心の中がどれだけ見えているのだろうとか、また耳を傾けて生きているのだろうかと考えてしまいます。生きていくだけも精いっぱいだし、生きていくためにはお金が必要だし、いろんなことに気を付けながら恐怖と向き合いつつ日々を重ねていきます。

コロナ禍で入学していろんな行事を楽しめないまま卒業していく高校生などを見ていると、この隣人Xのように世の中から孤立した存在というものがよく理解できると思います。私も一番忙しかった20代の頃にあらぬ記事を書かれて傷付いたことがいっぱいありました。人を楽しませたいという想いでやっているのに、それが報われない。でも、そういう時代を経たからこそ、この縦社会から離脱して生きている良子を今演じることができるのだろうし、笹という記者との関係性も20代の私にはよく理解できなかったでしょう。

そうしたパーソナルな部分にも注目して楽しんで頂きたいです。もっと素直に、何のフィルターもかけていない目で世の中を見ていくってどんな感じなんだろう?と、この映画を観て自分なりの想いを見つけて頂けたらいいなと思います。どうぞお楽しみ下さい。
 


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二転三転する真実、交錯する想いと葛藤―

予測不能なラストが待ち受ける、異色のミステリーロマンス

【STORY】

世界中に紛争のため故郷を追われた惑星難民Xが溢れ、日本にも既に潜入して来ているのではないかとパンデミック時のように疑心暗鬼になっていた。人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ X がどこで暮らしているのか、誰も知らない。X は誰なのか、彼らの目的は何なのか。犯人探しのように世間の関心を集める中、週刊誌記者の笹憲太郎(林遣都)は、ある事情を抱えながらも躍起になってXのスクープを追い掛けていた。そこで、取材対象の1人・柏木良子(上野樹里)にターゲットを絞り正体を偽って距離を縮めようとするが、次第に良子の人間性に惹かれていく…果たして良子はXなのか、嘘と謎だらけの関係性に人として向き合うべき信頼が揺らいでいく。

 

◆出演:上野樹里 林遣都 黃姵嘉 野村周平 川瀬陽太 / 嶋田久作 / 原日出子 バカリズム 酒向芳
◆監督・脚本・編集:熊澤尚人
◆原作:パリュスあや子「隣人 X」(講談社文庫)
◆音楽:成田旬
◆主題歌:chilldspot「キラーワード」(PONY CANYON / RECA Records)
◆製作:2023 映画「隣人 X 疑惑の彼女」製作委員会 (ハピネットファントム・スタジオ AMG エンタテインメント ポニーキャニオン 恆星多媒體股份有限公司 講談社 スカーレット)
◆配給:ハピネットファントム・スタジオ
◆2023 年/日本/120 分/カラー/シネスコ/5.1ch
◆©2023 映画「隣人 X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

◆公式サイト:https://happinet-phantom.com/rinjinX/

2023年12月1日(金)~大阪ステーションシティシネマ 他全国ロードショー!


(河田 真喜子)

 

 

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大変お世話になっております。幸せな人生を選ぶ決意の手紙を20万人以上がシェア。フランスから発信された感動の世界的ベストセラーが映画化! 『ぼくは君たちを憎まないことにした』が公開中。


本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。


bokunikumanai-550.jpg誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


たった一人の言葉が世の中の声を変えていく。ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りに

 パリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。


bokunikumanai-500-2.jpgパリ同時多発テロから8年。憎しみの連鎖を断ち切る1つの答えがここにある!

ロシアのウクライナ侵攻やTVではパレスチナ、イスラエルのニュースが連日放送され、世界中で起こっている止められない“憎しみの連鎖”を目の当たりにし、気持ちがどうしても沈んでしまう昨今。本作も130人が犠牲となったパリ同時多発テロで、最愛の人を失った父と子を描く中で、主人公がテロリストに「憎しみを贈らない」と決意表明し、幸せに生きていくことを誓う。この決意に至るまではもちろん苦しみや悲しみにもがき苦しむ主人公たちの姿が描かれる。それでもアントワーヌと息子のメルヴィルは、それらを抱えて幸せに生きていくことでテロに負けないと心に決める。まさに本作は、憎しみの連鎖が蔓延る世界に生きる我々が観るべき強いメッセージを伝えてくれる。


11月13日でパリ同時多発テロから8年が経つ。憎しみや怒りを乗り越えていかないと終わらない“憎しみの連鎖”を断ち切るヒントを今作は教えてくれる。
 



天才子役のかわいい場面カット9枚も一挙解禁!


本作で映画評論家の町山智弘が「とんでもない天才が現れた」と大絶賛したのが、母親を失ったメルヴィルを演じたゾーエ・イオリオ。劇中のメルヴィルは1歳の男の子だが、ゾーエは女の子で撮影当時は3歳。監督はフランス、ドイツ、ベルギー、スイスでオーディションを行い、ゾーエを見つけたそうで、「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている。」と初対面で特別な子だと分かったという。「ゾーエは他の子たちとは違って、大人の俳優のようにシーンを理解して感情を表現したんだ。とても器用で賢くて、自分の考えを表現できる特別な3歳児だった」と振り返る。3歳児がそもそも演技をできることが驚きだが、ゾーエは母親の不在、失った哀しみ、父と過ごす幸せな時間など様々なシーンで類まれなる演技を披露し、観る者の心を揺さぶる。


解禁された場面カットも当時ゾーエが3歳ということを考えると、「とんでもない才能が現れた」という賛辞も決して大袈裟ではないことがわかるだろう


<STORY>

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2015 年 11 月 13 日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り 出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最 愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲し みを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を 奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一 晩で 20 万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクー ルダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。


監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/
原題: Vous n‘aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE 
日本語字幕:横井和子/提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion nikumanai.com

公式サイト:http://nikumanai.com

TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS、他全国公開中


(オフィシャル・リリースより)

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 『クリスマス・ストーリー』(2008)、『あの頃エッフェル塔の下で』(2016)など監督作が高い評価を得ているフランスのアルノー・デプレシャン監督最新作『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』が、シネ・リーブル梅田、京都シネマで絶賛公開中。シネ・リーブル神戸でも9月22日から上映される。
 舞台女優の姉、アリスを演じるのは、デフレシャン監督初期代表作『そして僕は恋をする』にも出演のフランスを代表する女優、マリオン・コティヤール。詩人の弟、ルイを演じるのは、ジャック・ドワイヨン、エリック・ロメールからフランソワ・オゾン、グザヴィエ・ドラン、ミア・ハンセン=ラヴら名監督からのオファーが絶えず、『クリスマス・ストーリー』にも出演のメルヴィル・プポー。このふたりが演じる姉弟の葛藤ぶりやぶつかり合い、事故に遭い命が危ぶまれる両親たちが若い頃二人にもたらした影響など、他人事とは思えない、デプレシャン流家族物語だ。
 9月18日(月・祝)、シネ・リーブル梅田で、上映後に行われたアルノー・デプレシャン監督ティーチインの模様をご紹介したい。(司会は配給ムヴィオラ代表の武井みゆきさん、通訳はアンスティチュ・フランセ日本映画主任の坂本安美さん)
 

 

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■メルヴィル・プポーとマリオン・コティヤールのキャスティング秘話

本編後にルイ役のメルヴィル・プポーより、日本滞在時に、新宿ゴールデン街のバー、ラ・ジュテでデプレシャン監督と語り合ったことが本作に繋がったと思い出深く語った動画メッセージが上映されたティーチイン。その後登壇したアルノー・デプレシャン監督は来日経験は何度かあるものの、初めて大阪を訪れることができたことを喜び、「今まで東京に閉じ込められていたが、はじめて解き放たれた」と観客に向けて、ユーモアを交えながらご挨拶された。
 
 本作はなんといってもメルヴィル・プポーとマリオン・コティヤールのキャスティングが魅力だが、デプレシャン監督は「メルヴィルは、エリック・ロメールの代表作『夏物語』
で完璧な美青年だったが、年月と共に人間的にも深みが増し、今回は幼い息子を亡くすという役を演じてもらった。ルイはたくさんの弱点を持つ人間で、アル中だし、暴力的で粗野だけれど、全ての弱点が彼を魅了的にしている。ルイを演じるにあたっては、ジャック・ニコルソンの『ファイブ・イージー・ピーセス』を参考にしたそうだ」とメルヴィル起用の狙いを解説。
 
さらにマリオン・コティヤールについては、「アリスは、暗い感情を抱く女性だが、映画で彼女をジャッジするのではなく、解放したいと思った。そういう感情を演じられるフランスの女優を探し、マリオンに脚本を読んでもらったら、『彼女に何が起こったの?』と聞かれたので、『それはこの映画の中で君が探求することだ』と。マリオンはどんな役でも、その役を享受する力を持っているし、信じがたいほど複雑な人間をすごくシンプルに演じることができる女優です」と複雑な内面を持つアリス役オファーの裏側を明かした。
 
 
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■映画の力で故郷、ルーベを再発見

 
 観客とのQ&Aでは、まずデプレシャン監督の出身地であり、本作の舞台にもなっているルーベはどんな意味がある場所なのかという質問が寄せられた。デプレシャン監督いわく、フランス北部のルーベは、もっとも貧しく、朽ちて、荒れた暮らしをしている人が多かったという。若い頃にパリへ出たときは、パリジャンになろうとしてルーベの訛りを捨てようとした時期もあったという。監督デビュー作の『二十歳の死』で自然とその地に戻ったデプレシャン監督。そこには映画の力があったのだそうだ。
「見捨てられたような朽ちている場所でも、魔法のように輝く場所にできる。『クリスマス・ストーリー』では、雪が降り、街が輝いたし、本作でルイが空を飛ぶシーンがあるが、空からルーベを眺めることで、私自身もこの場所を再発見できたのです」
 
 
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■詩人のルイは影のような存在だが、どこかで姉に挑戦を挑んでいる

 
 詩人の観客から、アリスに向けてルイが彼女に宛てた手紙をポエトリーリーディングのように読むシーンもあるが、詩人をどんな存在として描いているのかという質問も寄せられた。デプレシャン監督は「アリスは著名な女優だが、詩人は秘められた、影のような存在。ルイも詩人の生活を続けるため、教師をしながら田舎に住んでいる。最初にルイが姉、アリスへの手紙をカメラ目線で読むシーンがあるが、あのシーンを作るのがとても大事で、どこか姉をからかい、恋い焦がれている、もしくは挑戦を挑んでいるようでもあるメルヴィンの演技は素晴らしかった」とその存在の意味を説明。ちなみに、ルイが最後に学校で生徒たちに読んで聞かせる詩は、監督の友人でもある詩人、ピーター・ギズィのもので、評価はされているものの、彼は他の詩人同様目立つ存在ではないが、ある日、有名画家のジャスパー・ジョーンズから突然、詩に対するお礼として絵が送られてきたという、突然評価されたルイの境遇と重なるエピソードも披露した。
 
 映画のタイトルが示す通り、憎しみ合う姉弟の物語だが、「どうしてあそこまで確執を持つ設定にしたのか」という質問にはデプレシャン監督が、ふたりの関係を表すシーンを示しながら説明。「アリスが楽屋で、自傷行為を行い『弟が(著書で)わたしの名前を盗んだ』と叫ぶシーンがあるが、アリスとルイは強烈な競争関係であるし、あまりにも愛し合っているからこそ憎み合うのか、親を取り合う子どものような姉弟関係と言える。ふたりは大人のふりをしているけれど、不幸な子どものようであり、逆に最後はようやくふたりとも大人になったから、子どものような気持ちになれたのでは」。さらに映画監督には2種類あり、ロベール・ブレッソンのように自分の映画しか興味がない人と、自分のように映画における影響を隠すことなく見せる人がいるとし、「映画は人間をより良いものにすると信じています。舞台に上りたがらない女優を描くとなれば、ジョン・カサヴェテスの『オープニング・ナイト』を想起しないではいられないでしょう。また、ルイが空を飛ぶシーンは、メルヴィルからシャガールのように飛ぶのかと聞かれたので、『マトリックス』のようにと伝えたんです」
 
 
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 家族だからこそ、自分の奥底にある感情をかき乱されてしまう。そんな愛と憎しみの間で苦しんでいるきょうだいは、決してアリスとルイだけではないだろう。両親の事故が、長年会うことも口を聞くこともなかったふたりを引き寄せていく、凝縮された家族の物語。お互いに気持ちがボロボロになり、人間臭さを滲ませるふたりだが、デプレシャン監督は決してそんなふたりを見捨てない優しさがあった。
(江口由美)
 
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<作品情報>
『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』“FRERE ET SOEUR”
(2022年 フランス 110分)
監督・脚本:アルノー・デプレシャン  脚本:ジュリー・ペール
出演:マリオン・コティヤール、メルヴィル・プポー、ゴルシフテ・ファラハニ、パトリック・ティムシット、バンジャマン・シクスー
公開中:シネ・リーブル梅田、京都シネマ、9/22(金)〜シネ・リーブル神戸にて
(C) 2022 Why Not Productions - Arte France Cinema
 
<特集上映>映画批評月間 フランス映画の現在をめぐってvol.5 アルノー・デプレシャンとともに
アルノー・デプレシャン レトロスペクティブ
10/27(金)〜出町座
10/28(土)〜シネ・ヌーヴォ
 
 
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